オーディオ・ドラマ 『白の森不思議』 (2010/05/29)
個々の作品についてあおせの思いますことなど
白の森不思議
色彩の豊かなオーディオ・ドラマでした。
白の森と呼ばれる村がダムの底に沈んでいる。
個人参加可のツアーバス。ダムを通るルートの観光バスに偶然乗り合わせた白の森出身の女達。
村はもう無いけれど、望郷の念に駆られ、ツアーに参加したのだ。
女達が互いに白の森での奇妙な経験を語っていく。そして、語る内にバスは白の森へと・・・
オーディオ・ドラマの特性をうまく理解している作品でした。
色彩や風景を言葉で表現する技術、どの登場人物が話しているのかをはっきりさせる台詞、バスという閉鎖空間。聞いた当時、上手く作ってあるなと感心しておりました。
また、花橘のかんむりつけて、お嫁さんが通るよぉという男の語りは絶品でした。
さて、中尾さんは白の森出身の女性の一人として参加しています。興味深いのは中尾さんの声が入ることで、すっとドラマが異空間へ入り込んで行くとでも申しましょうか。
背中のこぶに頭を埋めた男、座敷わらし、泉鏡花ばりの風景に、ドラマを聴く者がなんの抵抗もなくすっと入り込んでいくことが出来る、そんな異空間へと聴く者を誘う不思議な声でした。