夢の島少女 NHKアーカイブス放送時インタビュー より
放送日 2001年5月13日
NHK総合
インタビューア 加賀美幸子アナウンサー
加賀美:こんばんわ
テレビの青春、日本の自画像をテーマにお送りしていますNHKアーカイブス。今月は若者を描いたドラマとドキュメンタリーです。今日は「夢の島少女」1974年、昭和49年の番組です。思春期の少女と少年の揺れ動く心の軌跡を描いたドラマです。今日は「夢の島少女」に主演されました中尾幸世さんにこのスタジオにおいでいただいております。
加賀美:こんばんわ
中尾:こんばんわ
加賀美:あのー、中尾さんはこの佐々木昭一郎さん演出の「夢の島少女」がドラマ初出演ということで、それまで本当に映画もテレビも一度も出ていらっしらなかったそうですね
中尾:はい。まったく生まれて初めての経験なんです。
加賀美:まったく初めて
中尾:はい
加賀美:でも、そのあと、同じ佐々木昭一郎さんの「四季・ユートピアノ」、これは1980年
中尾:はい
加賀美:エミー賞を受賞した作品ですね
中尾:はい、そうです
加賀美:そのあと、あの川のシリーズがありますけれどもご紹介ください
中尾:まず、「川の流れはバイオリンの音」
加賀美:ええ
中尾:「アンダルシアの虹」
加賀美:はい
中尾:「春・音の光」以上の3本です。
加賀美:はい、いずれも佐々木昭一郎作の作品ですけれども、あの、国内的にも国際的にも大変高い評価を得て人々の心を捉えた作品ですけれども、あの「夢の島少女」の時は、あの、中尾さん高校三年生で、まさに受験を控えていらっしゃって
中尾:はい
加賀美:この出演ですけど、どういうきっかけでお話があったんですか
中尾:あの、高校二年生の時に、ええ、春休みまでの期間、あの、東京キッドブラザーズにおりました、その時に一緒に入団した方が佐々木さんのお友達のお知り合いだったんです、そういうことで、ま、あの、ドラマに出演する少女を探しているというお話が私のところにまいりまして、
で、ま、自宅の近くの喫茶店で初めてお会いして、自己紹介をして、それが終わるやにいなや、あの、全イメージというんでしょうか、あの、「夢の島少女」の内容をその場で、滝のようにこうお話になりまして、それが非常に素晴らしくて、あの、当時、ま、あの美術大学デザイン科を志望していたものですから、その中には映像もありますし、とても興味を持ちまして、あの、是非、一緒にと思ったんですが、ま、とにかく三年生なものですから、一度、そこで、あの、時間をいただいて考えさせていただいてお返事いたしました。
加賀美:でも心の中ではもうすっかり出演を考えていたと
中尾:もうそうです
加賀美:では、もうこの作品はもう、大変不思議な少女ですけれども、
中尾:はい
加賀美:あの、中尾さんご自身はどういう少女と考えていらっしゃいますか
中尾:あの、都会に出てきて、都会で傷ついて、失踪、うち捨てられた少女っていうんでしょうか、横倉健児さんの演じるケンちゃんもそういう少年なんですけれども
加賀美:ええ
中尾:ま、ストーリーのようなものはなくて
加賀美:ええ
中尾:ま、ほとんどが少年のイマジネーションのような世界、で、少女の記憶、少年の、まぁ、記憶、現実、そういうな、そういったものが混在している
加賀美:そうですね
中尾:作品だと思います。
加賀美:いまの横倉健児さん
中尾:はい
加賀美:あの、相手役の少年ですけれども、あの「四季・ユートピアノ」でも共演なさっているしね
中尾:はい
加賀美:あの、この作品、あの、27年前の作品ですけども、ほんと、おっしゃるように、あの、いまでも少年と少女の心の揺れがね、伝わってくるんですけども、あの、中尾さんとしては、この、どんなところを観てほしいと思われますか
中尾:あの、つくられた時代は70年代なんですけれども
加賀美:ええ
中尾:そういった時代の背景と関係なく、あの場所や時間を超えたなにかがあると思うんです。それぞれの方の、あの、自由な心で
感じていただきたいなと思います。
加賀美:本当に自由な心
中尾:はい
加賀美:そうですよね
中尾:はい
加賀美:さぁ、それでは1974年、昭和49年の作品です。ドラマ「夢の島少女です。
(約4分36秒)
これはあおせが聞き取りながらテキストに起こしたものです。ひょっとしたら聞き間違いしているところがあるかも知れません。あと、後半のインタビューは近日中にアップする予定です。
2002.1.6 ガンテさまから後半のインタビュー・テキストを送っていただきました。実は・・・、私は途中で挫折してしまっておりました。だって、前半は短かったけれど、後半長いですから。 ガンテさま、ありがとうございます。 それでは、以下に後半のインタビューを。 |
加賀美 | 中尾さん、こうやって今ご覧になって、改めてどんなふうにお感じですか。 | |
中尾 | すごく懐かしいです。でも、つい、ついこの間のような事にも思えますね。 | |
加賀美 | 実際には27年前ですけれども。 | |
中尾 | はい | |
加賀美 | あの、これスタジオではなくてオールロケですね。 | |
中尾 | はい | |
加賀美 | どれくらいの時間を掛けて撮影が行われたんですか。 | |
中尾 | とですね最初に東京で数日間、それから八森、という所で数日、また東京戻って数日ですから合計で20日ぐらい。 | |
加賀美 | 20日ぐらい | |
中尾 | か、ちょっとぐらいですね。 | |
加賀美 | じゃあ集中してあったんですか | |
中尾 | あ、はい、もう朝から晩まで。 | |
加賀美 | 朝から晩まで。 | |
中尾 | はい | |
加賀美 | あの、佐々木昭一郎さんの演出ですけれども、どうして欲しいとか、どうあって欲しいとか、どんなふうに言葉で伝えていたんですか。 | |
中尾 | あの、佐々木さんはこの「夢の島」に限らず、あの、すべて現場に台本を持っていかれないんです、その場でひらめいたものを大切になさるんで、あのその時に簡潔に指示をされて。例えばあの「マイボニーイズオーバーザオーシャン」という歌を歌っている窓辺シーンがあるんですが。 | |
加賀美 | ありますね | |
中尾 | あそこの場合だと、たとえば『ここに座って「マイボニー」を歌う少女です』て言われるんですけど、それがあのこう、なんか憧れるように歌ってください、とか、悲しそうに歌ってくださいとか、そういう事は一切仰らないです。 | |
加賀美 | 仰らない | |
中尾 | とにかく、その状況を仰って、それを私は自分の中でインプットしたものが、こうふくらむまで少し考えていって、それから、『じゃあ、お願いします』って葛城さんに申し上げる。 | |
加賀美 | カメラマンの葛城さん | |
中尾 | はい、それですからリハーサルも無いし、NGも無いんですね。それで、まあ75分以上のフィルムがかなり回ってると思います。 | |
加賀美 | そうですよね、今膨らむまでと仰いましたけどもね、じゃあ膨らむまでじっと、ずっと続けてるという事ですよね。 | |
中尾 | ええ、考えて、即佐々木さんの仰られた事がイメージで頭にふっと浮かぶ時もあれば、少し時間をいただいていって動ける時もありました。葛城さんはそういう私の事をよくわかっていらっしゃって、いつまででも待ってくださるし、いつまででも回してくださるという感じです。 | |
加賀美 | そうですか、じゃあいわゆるオフとオンですか、始めますよ、はい終わりそういう事は全くないんですね、ずうっと続いているっていう。 | |
中尾 | そうですね、気が付いて『あれまだ回ってるのかな』っていう事もありました。 | |
加賀美 | そうですか。でも全く初めての事でね、しかも高校3年生の中尾さんですけれども、どんなふうに感じながらなさったんでしょうか、大変っていう事ありませんでしたか、そういう状況の中では。 | |
中尾 | あの、かなり。そういう意味ではみんなが、常に、最高の状況でいつゴーサインが出ても動くっていう事で、準備をしてましたから、かなり緊張は高まってました、でそれで非常にに疲れたな、っていうのは思い出しましたけど。 | |
加賀美 | その緊張感ていうのは、でもそれは大変だっていう緊張感ではなくて。 | |
中尾 | ええ、終わってしまえば。これは一番最後の日に、撮影が全部すんで、車で自宅に送っていただいて、そして『さよなら』って部屋に戻ってから、ふと自分で考えたんですけれども、もうこれでこういうことは、こういう作品は、こういう表現は出来ないんだっていうふうに感じた途端にすごい涙が出てきて、すごい大きな声で泣いたもんですから、母が心配して下の部屋から跳んで来たということがありました。 | |
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加賀美 | もう本当にそれだけ全力をかけてなさったんだと思いますけれども、本当にさがす心、あの少年少女の揺れる心、あの実際の中尾さんはどういう少女だったんでしょうか。 | |
中尾 | えーと、あの、まずオシャレとかには興味がなくて。 | |
加賀美 | ああ、そうですか、今の若い、少女達のオシャレには全く興味が無かった。 | |
中尾 | ええ、いわいる雑誌も見ませんですし、ただ、あのそうですね、お芝居とかテレビもあんまり観なくて、あの音楽が好きだったんです。あの、まあ、そうですね音楽を聴きに行ったりする事がとても好きでした、ロックとか、ええ、バッハも好きでしたし。 | |
加賀美 | この少女もとてもね、音楽がね好きですけれども、そうするとやはりこの少女と中尾さんはこうやって重なって、いたんですね。 | |
中尾 | そうですね、確かに重なる部分もありますし、完全に私ではないなっていう、佐々木さんが作った少女の中に私を入れて演じてるなっていう部分もたくさんあります。 | |
加賀美 | そうですか、こうやって「夢の島少女」のあとですね、でもこれが18才高校3年生ですから、それから5本の作品、ええと最後がもう20代後半ですか。 | |
中尾 | はい | |
加賀美 | そうすると10年間、佐々木さんの作品に主演を続けていらっしゃったわけですけれどもドラマの中でもね、私たちは中尾さんの変わっていく姿をね、見てきたんですけれども | |
中尾 | それは1番、まあ今日の作品がこう一番閉じている感じがしますし、徐々にこの、作品の中で明るくなっていくんですけれども、それはあの私が変わったというよりは作品の質が開放的になったのかなあって思います。私は元々天真爛漫を地で行くようなところがあるので。 | |
加賀美 | あそうですか、そのままの。 | |
中尾 | はい、そのままの。 | |
加賀美 | そうですか、そうするとあの、御自身はドラマによって御自身も変って行ったって。 | |
中尾 | まあ、ドラマによってっていうか、まあそうですねドラマの影響でっていう事はないんですが、まあ社会に出たり、いろいろ視野が広くなっていくうちにやはりいろいろな変化はあったと思います。 | |
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加賀美 | ああそうですか、あの実はですね、佐々木昭一郎さんから『中尾幸世さんへ』というメッセージを頂いてるんです、あのいいですか読ませていただきます。 | |
中尾 | はい | |
加賀美 | オッチョ?オッチョっていうのは? | |
中尾 | ナカオサチヨを詰めるとオッチョ | |
加賀美 | ああ、それはずっと前から、オッチョて | |
中尾 | もうこれは中学生からのあだ名なんです。 | |
加賀美 | わかりました、じゃあ、佐々木昭一郎さんからオッチョ中尾幸世さんへ | |
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加賀美 | こういうメッセージが届いてます。 | |
中尾 | ……(ありがとうございます) | |
加賀美 | ほんとにハートを分かち合って作って来たって。 | |
中尾 | …… | |
加賀美 | そう。なんですね。 | |
中尾 | (はい) | |
加賀美 | あの、厳しいその、撮影条件を乗り越えて。 | |
中尾 |
確かに、まあ、あの現場では非常にあの静かな演出をなさる方で、決して怒鳴ったり時間的に非常に酷なそのスケジュールを押し付けたりそういう事は全くありませんけれども、表現に関してはあくまでも厳しかった事は確かです。 |
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加賀美 |
でもその、この中でほんとにあのハートを分かち合って作って来たという、あのその事が私達にも伝わって来るんです。最後にあの『人生の宝石だった』って。 |
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中尾 |
ああ、私もこれらの佐々木さんの作品に参加出来た事はとってもほんとうに人生の宝です。 |
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加賀美 |
あの、この中でですね、佐々木さんはあの実生活者を大事にって書いてますけど、その後中尾さん御自身はテレビや映画に専門の道を進むことなく他の道を歩いてこられたんですね。 |
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中尾 | はい | |
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加賀美 | 今はどうゆう事を中心に活動なさってますか | |
中尾 |
今は、テレビなどのあとに、まあ本数は少ないんですけれどもラジオのドラマをさせていただきました。そのあと今は朗読を音楽家の方とコラボレーションしたり、あのプラネタリュウムのナレーションをしたりという声の表現の仕事に携わっています。 |
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加賀美 | そうやはり、声、言葉。 | |
中尾 | はい | |
加賀美 |
そうですか、実際には美術学校を出られて絵がほんとお好きだったという事でしたけれども、今絵の方は? |
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中尾 | 絵の方は今はお手紙にちょっと添えるぐらいの絵しか描かないんですけれども。 | |
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加賀美 |
そうですか。あの中尾さんにとって「夢の島少女」は一番スタートの作品ですよね、これはあのどういうもの、あるいはこの作品が何を中尾さんにもたらしたか。 |
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中尾 |
まあ、あの、当時高校3年生で美術大学を目指していたっていう事もありますけれども、あのこのようなカタチで、こうイマジネーションを定着させるっていうその仕事に携わって、目の当たりに見て、自分もどうゆうカタチであれそういう御仕事にかかわっていきたい、表現をしていきたいっていうふうに思ったスタートで、それを今も続けているっていう事になります。 |
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加賀美 | その気持ちを強めた作品だったんですね | |
中尾 | あ、そうです | |
加賀美 | そうですか、でもあの共演したあの少年 | |
中尾 | はい、ケンジ君 | |
加賀美 | ケンジ君、ケンジ君とはその後は | |
中尾 |
残念ながら、どちらにいらっしゃるのか、消息を私は存じないのですが、はい、でも出来ればまた、ケンちゃんとか言ってお会いしたいです。 |
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加賀美 |
いいですね、もうほんとに、実生活者、その事を大事にして描かれた、それを大事にした佐々木さんですが、その後もじゃあ二人の少年少女も実生活で。 |
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中尾 |
もちろん実生活者以外の何者でもなく、ずいぶん私は職業女優というふうにはなりませんでしたので、その後もお芝居とか出る事もなく、ですからそれをスタートしたとか辞めたという事も別に本人としては自覚なく、毎日過ごしてまいりました。 |
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加賀美 |
それも大事に一筋という事ですね。今日はほんとにどうもありがとうございました。 |
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中尾 | ありがとうございました。 |
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