- 1
- 今でも分からない。兄は、どうしてあのメッセージを残したのか、どうやって残したのか。5月、まだ陽の落ちない夕刻、僕は一人で暮らしだして初めて、留守番電話のメッセージを受け取った。
- (重い金属の扉の閉る音、鞄を卸す音、足音そして留守番電話を解除する小さな電子音と機械仕掛けの女の声)
- 声
- 2件です
- (テープを巻き戻す音)
- 2
- 俺だ。半年ぶりだな、こっちに出てきたって手紙は2ケ月前に受け取った。独り暮らしにもなれた頃だと思うが、元気でやってるか?今はきっと大学で授業を受けてるんだろうな。19才か、早いもんだ。貧乏しててプレゼントもやれないが、また一緒に飯でも食いに行こう。
- (受話機を置く音。ツー…)
- 声
- 午後三時十七分です。
- 2
- …俺だ。肝心なことをいい忘れた。英次十九才の誕生日、おめでとう。
- (ツー)
- 声
- 午後三時十八分です。
- (ツー…と呼び出し音が響く)
(ノックとガチャリと開く木のドアの音)
- 1
- すみません、一○七号室の犬川の弟なんですけど、今兄がいないみたいなんで鍵を貸していただけませんか。
- 大家
- 一○七ね。
- (鍵束と足音、扉を開ける音)
- 大家
- じゃ、どうぞ。
- 1
- はい、お手数かけました。
- 大家
- 帰る時には声かけて、閉めなきゃなんないから。
- 1
- はい、…あの。
- 大家
- 何か。
- 1
- 帰るときには兄がいるんで鍵は別に要らないんじゃないかと。
- 大家
- 犬川さん、帰ってこないんじゃない
- 1
- は。
- 大家
- 1ケ月くらい私も姿見てないし、この前もガスの検針の人が、2ケ月もメーターが動いてないって言ってたしねぇ。
- 1
- え、だって…
- 大家
- 家賃はまだ3ケ月しか滞納してないけど、旅行か何かじゃないの。
- 1
- すみません。
- (電気のスイッチを入れる音)
- 1
- 一人でこの町にきて目まぐるしく2ケ月が過ぎようとしている。自分でも忘れていた誕生日に兄のメッセージをうけとって、僕は思い掛けずまだ一人の知り合いもいない他人ばかりの町で自分に親しい存在を思い出す。
- (プッシュホンの音)
- 声
- おかけになった電話番号は只今お客様のご都合により通話できない状態になっております。
- 1
- 電話代未納のメッセージを聞いて僕は直接兄を訪ねることにした。そして。
- (螢光灯のつく音)
- 1
- このからっぽの部屋を見つけた。電気のメーターがゆっくりと動き出す音まで聞こえそうな空の部屋には空のシンクと空の本棚がある。家具屋の店先でもみたことのない空の本棚を僕は蔵書家のはずの兄の部屋で初めて見る。本棚の下の畳は少しへこんでいる。机の上には電話が1台。留守中に電話があったことを知らせるランプが静かに点滅している受話機を取り上げるとすでに知っていたことだが耳障りな沈黙。電話回線は死んでいるが電話の機能はまだ生きているはずだ。
- (留守電を解除する音)
- 「はい犬川です。只今留守にしております。発信音の後にメッセージをお願いします。お電話ありがとうございました」(ツー…)「えー、建築学科の正木です。ゼミ旅行の日程等、決まりましたので1度研究室のほうへ顔を出してください。それから学会の世話役が犬川君がつかまらんと泣いてますので連絡を取ってやってください」「川越です。今度のミーティングは十六日の土曜日、第3集会室。幹部連中がうるさいのでなるべく出席のこと。以上」「オランダ亭の細川です。明日二十三日の2時から閉店まで、それから二十四日の朝から昼、人手が足りません。後そろそろ来月分の予定を出してください。なるべく土日に入ってくれるとありがたい。ということで、では」「明日3時に緊急ミーティングです。連絡網は回しときますが、これに出席しないと除名だそうです」
- 1
- 電話は嫌いだ。電話を見ると今にも鳴り出すのじゃないかと期待してしまう。この町にきてから僕に電話をくれる人間はまだ見つけていないし、ましてやこちらからかけることのできる人間など。唯一僕に電話をくれた兄はいなくなってしまった、それも僕の知らない間に。
- 「いつかけても話し中でようやくつながったら留守番電話なのね。それとも居留守電かしら。…そこにいるの?それともいないの?どこにいっているの?いつもだれに電話してるの?気付いていないかもしれないけど、あたしたちもう1ケ月以上も会話してないわ。−−−このままになってしまうならそれでもいい、どうなるにしてもあたしたち1度話し合いましょう。…犬川君がどうしてるか知りたいのよ。話がしたいの。…電話まってるからいつでもいいから、遅くても早くてもちっとも構わないから、…連絡して」
- (ツー……沈黙)
- 女
- (唐突に)…(けれ)ど彼には今やはっきりと分かったの。泉に映った龍の前足には黄金の腕輪があった。龍が彼をおっかけているのではなく彼自身が1匹の大きな龍になっていたのよ。邪悪な物の巣で欲深い心を抱いて眠ったから彼は龍になってしまったの。誰かの意地悪な魔法なんかではなくて彼自身の中の邪悪な心がユースタスを龍に変身させたわけなのよ。「(3:)龍は邪悪な生き物かな?」人を食べて黄金を貯えるのだから清廉な生き物とは言えないわ。「(4:)東洋では神聖な獣だよね」「(5:)龍とドラゴンは違うだろう?」
- 2
- うるさいな。3月さん、続けて
- 1
- いきなり飛び込んできた少女の声が語っているのはナルニア国物語だ。これはどうやら留守番電話ではない。少女のやさしい声は龍に変身した少年の受難を話し続ける。女 彼はしばらくの間これでカスピアンたちに仕返しができるぞとか自分より強いものはこの島にはいないんだとか考えたわ。でもそれは現実逃避だって自分でも分かったの。彼はまだ余りこの国に慣れてはいなかったけれど人の姿に戻るにはナルニアの人の力が必要だろうと考えたの。ユースタスは少し変わっていたけれど本当はとても強い子供だった
からカスピアンやエドマンドのところにいって事情を説明して助けてもらおうと決心したの「彼はカスピアンが嫌いだったんだろ?」王子が苦境に陥っていてもユースタスは助けないだろうけど、ユースタスが困っているのを王子は見逃さないでしょう。そのくらいカスピアンが正義感の強い信頼の置ける人だってことは彼も知っていた。ユースタスのような少年にとってこんな醜い姿を嫌いな人の前に去らすのは死ぬより辛かったけれど、こんなわけの分からないところで一人きりになってしまうことの恐ろしさに比べたらそんなの大したことないって考えて彼は船のいる海辺に戻ることにしたの。
- 1
- 3月さんという奇妙な名の少女の話はテープの終わるまで延々と続いた。それだけでも驚きだがテープを裏返してその続きを発見したときには僕はさらに驚いた。ナルニアの一行の旅は1時間テープの両面にまたがってもまるで終わりそうになかった。
1
- あーのぉ、お邪魔します。工学部の四一一教室ってここですか。
- 学生
- そうだよ。何か?
- 1
- あーのぉ…犬川義人の弟なんですけど。
- 学生
- 犬川の?似てないね。
- 1
- よく言われます。あの兄は最近こちらのほうにきてますか。
- 学生
- いや、見ないな。今期に入ってから1度もきてないんじゃないかな。
- 1
- はぁ、何か旅行にいくとか言ってませんでしたか。
- 学生
- 下宿にもいないの?
- 1
- はい
- 学生
- じゃぁただの卒業したくない病じゃないんだな。実家に連絡は?
- 1
- もともと余り行き来なくて。こっちからも連絡とれないし。
- 学生
- 電話じゃだめだよ。犬川は電話が通じないの有名だから。話し中か留守電で、自分では絶対にとらない。…彼女のところに転がり込んでるってのがありがちじゃない
- 1
- はぁ…
- 学生
- 研究室公認の彼女がいるけど連絡とってみる?
- 1
- 兄貴の留守電聞いてみたんですけど、何か…望み薄かなって。
- 学生
- じゃあ里美ちゃんじゃなくて新しいほうだな、きっと。
- 1
- 心当りあります?
- 学生
- 詳しくは知らないけど…大分貢いでる風だったな…犬川、冬から急に苦学生になったから…
- 1
- 学校の友人もサークルの友人もバイト先の人も恋人ですら兄の居場所を知らない。兄を心配しているこんなにも沢山の人のいる町で、兄は一体どこへ消えることができたのだろう。僕はそして兄の部屋に戻る。「話がしたいの。…電話まってるからいつでもいいから、遅くても早くてもちっとも構わないから、…連絡して」
- 1
- 兄の行方を辿るためのヒントは何ひとつ部屋に残っていない。ここで誰かが暮らしたことさえ定かではない。
- 「はい、犬川です。只今留守にしております…」
- 1
- テープと電話だけが語り続ける部屋で僕は途方にくれる。人一人が消えるのはなんて簡単なんだろう。「(発信音)午前1時3分です」「(発信音)午前1時4分です」「(発信音)0・9・9・0・3・N・0・N・8・0・です」
1
- 短縮ダイヤルに登録されていた一連の番号をつぶやきながら僕は夜半の道を走る。目指す緑の電話に飛びつくと僕は覚えている番号を正確に叩いた。
- (プッシュホンの音)
- 声
- このサービスは情報料と通話料合わせ二十・秒毎に約十・円の料金がかかります
- (呼び出し音)
- 女
- お電話有難うございます。この番号は月の出から月の入りまでの時間だけ開通するコミュニケーションラインです。
- (発信音)
- 1
- もしもし。
- 女
- もしもし。
- 1
- あの、お伺いしたいことが。
- 3
- しばらくモニターしてればこのラインの性質は分かるよ。
- 1
- あの、3月さんに聞きたいことがあって
- 女
- 今はもう6月だわ。
- 5
- 話が終わるまで待てよ。
- 1
- ずっとここに電話してた兄が行方不明なんです。
- 4
- 話が終わるまで待てないかな。
- 1
- 話っていつ終わるんです?
- 女
- あと1時間くらい、今日は午前3時3分が月の入りだから話し終えてもまだ三十分くらい暇があるわね。
- 1
- 何の話をしてるんですか?
- 3
- 聞いてれば分かる。
- 4
- 話の続きを、6月さん。
- (受話機を置く音、カードが出てくる時のけたたましい警報)
(町の中の喧騒)
- 3
- 火、あるかい?
- 4
- ライターが確か…ガス、切れかけてますけど
- 5
- マッチならあるけどこの風だからね。
- 3
- ありがとう
- 5
- あれじゃないかな?
- 4
- 似てますね
- 5
- あれだろう
- 3
- それで?
- 1
- えっ
- 3
- 犬川君の弟だろう。
- 1
- あ、はい、じゃ、あのあなたたちが。
- 5
- そっくりだな。
- 1
- え
- 5
- じゃ俺は行くから。
- 3
- ああ、また今夜。
- 4
- 移動しますか。
- 3
- 君は時間いいのかい
- 4
- 余りよくありません。犬川君についても大して知っているわけじゃない。彼は伝説的な常連でしたがね、城戸さんと同じくらい。彼がかけてこなくなっても別に不思議にも思わなかったし、引退かパンクかってとこで行方不明だなんて思いもよりませんでしたよ
- 1
- パンク?
- 4
- 破産ですよ。彼の場合学生だったし、いつそうなってもおかしくない状況でしたよね
- 1
- 電話代で?
- 4
- 月に一○万はザラですよね。掛け続けたとして最高でいくらになります?
- 3
- 単純に1日十二時間月が出てるとして六十四万ほどだ。
- 4
- 城戸さんはどうしてます、毎月。
- 3
- 企業秘密だ。君はまだ大丈夫かい?
- 4
- そろそろ用心しないとヤバイですね。引退間近ってとこですよ。城戸さんと顔を合わせるのもこれが最後かもしれない。
- 3
- 犬川君の様に夜逃げするか?
- 4
- それはなるべく避けたいな。
- 1
- 兄は夜逃げでしょうか。
- 3
- 可能性は高い。…彼はどういなくなったんだ?
- 1
- 分かりません。ただ学校にも下宿にも姿を見せなくなっていたはずの先月二十三日に僕の留守電にメッセージが残っていて…
- 4
- 我々と話してた頃でも犬川君には学校にいったり人とあったりする暇なんてなかったでしょう
- 3
- そうだな、月の出とともに生活する奴が学校にまともにいけるわけはない。
- 4
- 城戸さんは?
- 3
- おれはいってるよ。仕事だからな。
- 4
- 問題は仕事と電話を半々にしないと生活していけないという点ですね。
- 3
- 稼ぎに追いつく電話代ってね…俺の記憶では犬川兄は最後の頃いつかけてもいた。月の沈むときのほかはずっと電話の前に座っていたんだろう。
- 4
- もうその頃には彼は自分からはほとんど喋ることがなかったから僕たちは彼の存在に気付かないことが多かった。存在に気付かないってことは不在にも気付かないわけだ…恐らく彼の消えた正確な時期を知っているのは6月さんだけでしょう。
- 1
- 彼女は何故現れないんです?
- 3
- 犬川弟。君は6月さんと待ち合わせたつもりだったのか?
- 1
- 僕はあのラインの皆さんと…
- 4
- 6月さんとあったりした奴はいないんだ…覚えておいたほうがいいですね。
- 3
- 時間はいいのか。
- 4
- いや、もう行きます。いずれにしても僕は彼について余り知らない。城戸さんはしばらく付き合うんですか?
- 3
- 少し興味がある。
- 4
- 同じ常連のよしみですね。じゃあ
- 3
- また月の夜に。
- 1
- 彼等は何で帰っちゃうんです?
- 3
- 用があるからさ。俺も後30分もしたら歯医者へ行かなくちゃならない。
- 1
- 何も用のある日に待ち合わせなくたって…僕はもっとゆっくり話したかったのに。
- 3
- みんな用事はまとめてすませることにしてるんだ。用がなければ電話してるよ。それに俺たちが君よりよく犬川兄を知り得たかな
- 1
- 兄の事を貴方達に聞くのは間違いだと?
- 3
- 相手が何物であるにせよそれを追うにはその足跡を辿る必要がある。俺たちは君の追うものの正体は教えられないが追う方法なら教えられるかもしれない。
- 1
- 正体って兄の?
- 3
- こっちには君の言う犬川兄と俺たちの知ってる犬川が同一人物かどうかさえ知りようがないんだぞ。
- 1
- 兄の留守電の声を聞いてもらえば。
- 3
- いや君はたぶん彼の弟だろう。ひどくよくにてるから。
- 1
- そう言われるのは初めてだ。
- 3
- 外見は似ちゃいないが影がそっくりだ。俺たちはだからみんな初めてみる君を犬川の弟だと認めた。外見は理性の行動範囲に規定され、影は感情の行動範囲の形をしている。君の右肩の下がり具合、歩くときの足の運び様、君の影は彼に瓜二つだ。
- 1
- 影?
- 3
- 君は今犬川兄の行動を追っているがそれはあるところでふっつりととぎれるはずだ理性で動かなくなった人間は次に感情で動きはじめる。だから君は彼の影を追わなくちゃならない。彼の感情がどんなふうに動いたかそのために彼がどこへいって何をする必要があったのかそれを知るために君は彼と同じ感情を持たなくちゃならない。
- 1
- 論理的にはそうでしょう。でもそんなことが本当にできるんですか。
- 3
- 少なくともあのラインに参加していた人間同志ならたやすいことだな。
- 1
- ライン?月夜のコミュニケーションライン?あれは一体何なんです?
- 3
- 世間で悪名高いダイヤルQ2だよ。
- 1
- 兄はどんな話をしていました?
- 3
- 俺たちは話はしない。話を聞くんだ。
- 1
- それが面白いんですか。
- 3
- 聞いていれば分かるよ。
- 1
- 聞きました。兄が録音しておいたのを。ナルニア国物語でした。ずっと6月さんが1時間も話し続けていました。ああいうのずっと聞いてるんですか?
- 3
- そうだよ。
- 1
- 僕にはよく分かりませんね。
- 3
- まず2つのきっかけが必要だ。6月さんの話を最後まで聞いてみようと思うこと、次にもう1度6月さんの話を聞きたいと思うことだ。ともかく一つ目はクリアしたね
- 1
- テープは最後まで聞きましたが、もう1度聞く気にはならなかったな。
- 3
- 同じ物語じゃあ駄目だ。…いずれにせよ彼と同じ感情を持てというのはお勧めできないな。君が本気で犬川兄を追いたいというなら別だが、危険すぎる。
- 1
- 本気ですよ、疑うんですか。
- 3
- 君の影が似ているからな…犬川と同じになれば君もまた消えるかもしれないぞ。第一彼が消えても君の今の生活に支障はあるまい?彼の不在を追うことで君自身の中の不安を紛らわそうとしてるんじゃないか?
- 1
- …
- 3
- その要素があるならすでに君は彼の影の中にいる。
- 1
- 兄も不安だったんですか。
- 3
- 彼は電話回線を6月さんの元までさかのぼろうと常に試みていた。パンクする前にね
- 1
- そんなことができるんですか?
- 3
- それは君が確かめるんだ。そろそろ時間だ。もう行かないと月の出に間に合わない
- 1
- 貴方はパンクしないんですか?
- 3
- ああ
- 1
- 実は資産家?
- 3
- しがない大学の助手だよ、犬川兄の大学のね。俺は電話回線に住み着いているんだ
女
- それでマイキーはテレビを見ているの。靴も脱がずに椅子の上で膝を抱え込んでねテレビでは漫画をやっている。家族の出てくるほんのたわいもない漫画よ。それを見てマイキーは肩を震わせて笑ってるの。本当におかしくてたまらないのよ。そこへ客が入ってくる…マイキーは足を揃えて客に向きなおり笑っていた幼い子供の顔から仕事をする娼婦の顔になるわ、あっという間にね。
- 1
- 今夜は二十夜だ。6月さんは映画の話をしている。街角に立つ少年は家族を持たない喪失感から発作を起こして眠りに落ちる正直なところ大の男たちが6月さんの少女の域を抜けない声にじっと耳を傾けている様子も僕には何かの喪失感からくる心の病に思えて仕方がない
- 女
- スコティはついに諦めるの。目の前で泣き出したマイキーは彼から見ればただの子供で拒むことなんてできそうになかったから。彼はこっちに来いってマイキーにいうのよ、何も考えずに一緒に寝ようって。「(5)それで寝るのかい?マイキーは発作を起こして眠ってしまうんじゃないか?」きっとそうね。でも本当に寝たかどうかなんて問題じゃないのよ。その一瞬確かにマイキーとスコティは同じ気持ちになったの。同じやさしい気持ちにね。それでいいのよ。同じ時間を共有したんだからそれで構わないのよ。
- 1
- 僕たちは雛だ。6月さんが1度自分の中に取り込んで咀嚼した物語を口の中にいれてもらおうと大口開けてまっている雛だ。僕たちは自分で物語を選ぶことも考えることもなく、ただ6月さんが語ってくれるのを聞いているだけでいい。百人の人間が一つの物語を読むとき、そこには百の別々の感情が動く。つまり百の物語が生まれるのだ。だが6月さんの語る物語を聞いている僕たちは一つの物語の一つの感情を同時に共有することができる。僕たちは段々6月さんになっていく。僕たちは段々透明になっていく。
- 女
- 殴られた顔そっくりのその道は喩えどんな時にマイキーがそこに戻ってきてもいい一日をって呼びかけるのよ。道に一人きりで車1台通らなくて途方にくれても道の果ては流れる雲の中でにっこり笑っていい一日をってマイキーに言ってくれるの。「(4)それが彼の捜し続けた母親なのかな?」そうかもしれないわ。自分が世界のどこにいってもその道は確かにそこにあるんだと覚えていれば勇気付けられるんだから家族とにているかも知れないわね。…月が沈むわ。今日はこれでお開きにしましょう。今夜は明日になる瞬間に回線を開けるから…「じゃあね6月さん」「お休み、6月さん」
- 1
- 行ってきます、6月さん。
- 女
- いい一日を
1
- 兄の行方は知れない。兄の感情を追うならば、兄がどこにいても気が挫けたり、疲れたりした時には7月さんの声を聞きに電話をかけるはずだと思われた。いつか僕たちは電話を通じてお互いの居場所を確認することができるはずだ。兄が自ら7月さんに別れを告げるはずはない。城戸助手は相変わらずパンクすることなく常連を続けている。夏休みに入り、僕も歯医者通いを始める。元もと歯は強いほうだし甘いものも嫌いだったのに、近頃では毎日カスタードプリンを3つも食べる生活だ。段々と嗜好まで7月さんに近くなっていく様だった。
- 声
- このサービスは情報料と通話料合わせ、二十・秒毎に約十・円の料金がかかります
- 1
- 僕の電話にも7月さんの電話番号が登録された。7月さんの居場所を聞き出そうとしてたしなめられるのも日常茶飯事だ。彼女は自分のことは話さない。彼女は物語を再構成するための一つの分子に過ぎない。そう幾度考えても、僕は彼女を追いかける僕は兄に近づいている。
(チャイムの音)
- 少年
- もしもし
- 女
- もしもし
- 少年
- 可愛い声だね、彼女。どこからかけてるの?
- 3
- 新人、こいつはツーショットラインじゃないぞ。
- 少年
- パーティラインでしょう。
- 4
- 話がしたいとか、女性を口説きたいというならよそのラインへいってくれませんか
- 少年
- 何か秘密のラインなんですか?モニターされたくない会話をしてるなら…
- 1
- うるさいな、きるか、黙って9月さんの話を聞けよ。9月さん、続けてください。
- 女
- ええ…
- 少年
- このラインは何をするラインなんですか
- 3
- おとなしく聞いてれば分かる。黙る気がないなら切れよ。
- (電話の切れる音)
- 4
- 妨害される可能性がありますね。
- 3
- 対策は後で考えよう、9月さん、それからビニキウスとリギアはどうなったんです
- 女
- ええ、ビニキウスはその前日キリスト教徒が二十人ばかり競技場で死んだこととその日また数十人が死ぬことを伝え聞いて…
- 1
- 僕たちも含めて電話で見知らぬ者と話をする連中はえてして無用なプライドをもっている。こういった連中は電話をすることに対して内心後ろめたさとそれを認めたくない気持ちを合わせ持っている。傍若無人な物言いをする奴ほどその傾向が強いからこう排他的な扱いを受けて奴が僕らの巣を攻撃してきても不思議はない。それもかなり陰湿なやり方が考えられた。
- 3
- 例えば伝言ダイヤルのオープンスペースにこの番号を入れるとか。
- 5
- ありうるな。アダルト番組目当ての連中にこの番号を占拠された日には目も当てられない。
- 4
- 対抗策は?回線が開く少し前に僕らが全員揃っていることしかないかな?
- 1
- このラインの定員は5人でしょう。一つ椅子が空きになってるのはまずい。
- 5
- といってうかつな奴をその場凌ぎに仲間にいれるわけにも行かないだろう。
- 3
- 仕方ないな。俺が2本かけるよ。
- 1
- 事も無げに城戸助手はそう言って確かにその夕暮れ2本電話をかけてきた。妨害は入ることなく、僕たちは1週間かけてネロの時代の物語を無事聞き終えることが出来た。ラインに紛れ込んできた彼も自尊心を傷付けられたかもしれないが、たまにああいった闖入者がいると僕たちも足元がすくわれるのは確かだ。まるでハーレムのようだとか、女王蜂に仕える働き蜂のようだとか。だが僕たちは雛だ。9月さんの巣の中で口を開けて物語の運ばれるのを待っている雛だ、そのことに疑問はない。
(町の中の喧騒)
- 4
- はやいね、犬川弟。
- 1
- 今日は何ですか?
- 4
- 大学、ちゃんといってるかい?
- 1
- いや、あんまり
- 4
- 犬川兄の行方は?
- 1
- それも遅々として。
- 4
- 自制しろよ。そうでないと命は短いぞ。
- 1
- ええ
- 4
- 僕もついに引退だ。
- 1
- パンク、ですか。
- 4
- 今年中は大丈夫の予定だったんだけどね
- 1
- 仕事、何してたんですか?
- 4
- プロの家庭教師さ、週に3日働いて4日電話してたんだが、ペースが狂った。
- 1
- 城戸さんて電話代どうしてるんでしょうね。
- 4
- 彼はタダ掛けしてるらしい。あの人は二重人格的なとこがあるからな、僕らと違って物語を聞きながら犯罪やるくらい平気だろう。今日はバイトは?
- 1
- これからいきます。
- 4
- 達者でな。人生大事に使えよ。
- 1
- 二重人格的なとこ、そうだ、物理学を専攻している彼はまだ理性の行動半径と感情の行動半径のバランスを保っている。兄のように回線をさか上るなんて無茶もしない兄は物語という繭を電話の回線を辿って行くことで解き、中に隠れている彼女を見つけ出そうとした。そんなことができるのなら。
- (留守番電話を解除する音)
- 声
- 一件です
- 「(3
- )城戸です。昼に研究室にきてくれたそうだけど何だったんだろう。急ぎなら自宅のほうへかけてくれればいいし、月の出以降は十月さんのところにかけてるからそっちでもいい。自宅の番号は…」
- 1
- 違う。
- (テープを巻き戻す音)
- 2
- 俺だ。半年ぶりだな、こっちに出てきたって手紙は2ケ月前に受け取った。独り暮らしにも…
- 1
- 明瞭すぎる。電話回線を1度潜り抜けてそれから録音された声か、これが。これではまるで。
- 2
- 十九才の誕生日、おめでとう。
- 1
- まるで…電話回線の中に。
3
- 方法はこうだ。まず、俺と彼の時計を合わせる。そして彼女のところに電話をしている最中決まった時間に時計のアラームをならすんだ。するとその音はまず電話局にいき、彼女のところへいきそこからまた局にいき、犬川兄のところへいく。アラームのわずかなズレを利用して時差を出し、そこから音速を使って局と彼女の間の距離を算出する。局からその距離を半径にしてぐるりと円を描けばその円周上に彼女がいるというわけだ。
- 1
- 本当ですか。
- 3
- でまかせだと思うね。俺は
- 1
- 僕もそう思います。
- 3
- ただ俺が聞いたのは初期の段階だから、音の流れの正確なところを掴んで修正を繰り返せばやってやれなくはなかったろうと思うよ。事実その後1度犬川兄が彼女に時間を尋ねているのを聞いたことがある。なるべく正確にといっていたから、方法を見つけたのかもしれないな。
- 1
- 回線をさかのぼった?
- 3
- どうかな
- 1
- 彼女の居場所が分かれば即刻たずねていくでしょうね。
- 3
- そうかい?
- 1
- 今城戸さんの言った音速って言うの、僕らは彼女と同じ物語と感情を同時に共有してるのが楽しいんだから彼女の声が耳に届くまでにほんのコンマ00何秒でもズレがあるなんて思うのたまらないじゃないですか。たった1文字分の時間だって嫌でしょう?やっぱり彼女のすぐそばで声が発せられると同時に聞くことができればそれが最高でしょう。
- 3
- 犬川兄もそう思っただろうな。
- 1
- そう思いませんか?
- 3
- 俺は俗な人間だから未だに彼女のイメージを外見でしか思い浮かべることができないし、それが絶対的に間違ってることも分かってる。実物に会いたいとは思わないな
- 1
- そうかな。
- 3
- 本人に会いたいと思ったらこう長くは続かないよ。
- 1
- 城戸さんが長続きしてるのはただ掛けだからでしょ。
- 3
- ただだが溺れちゃいないぞ。君ほどにも
- 1
- 僕はちゃんと電話代払ってますよ。法律に触れることなんかしてませんよ。
- 3
- 俺のやってることは犯罪かもしれないが非合法でないことはまちがいないぞ。広く見れば詐欺だが、証拠も残らないし現行犯逮捕もできない。
- 1
- どんな方法なんですか?
- 3
- 教えられないな
- 1
- いいじゃないですか、誰が迷惑するってもんじゃなし。自分だけそういう手使うのって狡いですよ。
- 3
- 誰が迷惑するもんじゃないからこそ、自分に責任を持てる奴じゃないと駄目なんだ
- 1
- 僕は自分に責任持てないって言うんですか?学生だから?だからこそこのままだと首が回らなくなってパンクしちゃうんですよ。ね、教えて下さいよ。もうちょっとで兄貴が見つかるかも知れないんだから。
- 3
- 犬川兄は俺がただ掛けしてることを知ってたが教えろなんて言わなかったぞ。決して
女
- 今日の話はこれでおしまい…もうそろそろ月が沈むわ。まだ残っているのはどなた?
- 1
- 僕です。…犬川弟。
- 女
- 十六夜の頃は最後までいる人が少ないわね…今日の月の入りは七時二十一分、あとまだしばらくあるけど、もう終わりにしましょうか?
- 1
- いや、待ってください。僕はもうずっと犬川弟と名乗っているけれど、最近のメンバーは兄のことなんか知らない連中ばかりだ。貴方ももう兄のことなんか忘れてしまったでしょうね。
- 女
- いいえ
- 1
- 兄がここでどんなふうにしてたか覚えてますか?
- 女
- ここにかけてきた人のことはみんな覚えているわ。
- 1
- 教えてくれませんか、兄がいつまでここにかけてたのか。何で居なくなったのか、貴方なら知ってるでしょう。
- 女
- …
- 1
- もしかしたら兄の行方だって知ってるんじゃないのかな。
- 女
- 犬川さんの話を聞いているとこんな話を思い出すわ。あるところに双子の兄弟がいてね、お兄さんは学者で弟は開業医なの、どっちも産婦人科医で、あるとき女優だって言う女が患者としてやってきて…
- 1
- しってる。子宮に3つ入口のある女だ。その女のために二人はめちゃくちゃになって最後にヤク中の弟が子宮の形をした変な器具で兄貴を殺して自分も気が変になって死ぬ。僕と兄貴もそんなふう?ヤク中の弟を治そうとして自分も弟よりひどい中毒になった兄貴が僕?僕はじゃあ兄貴に電話で殺されるのかな。
- 女
- …最後のシーンは違うわ。麻薬中毒の治療から脱走していた弟が戻ってきてぼろぼろになったお兄さんを見つけた時、お兄さんは弟に今日は自分たちの誕生日だと言ってケーキとジュースを出してやるでしょう…弟は好物のアイスクリームがないので泣き出してしまうけれど、それに対してお兄さんはママが買い忘れてしまったんだって応えるの。アイスクリームがないことも二人に別れて生まれてきてしまったことも母親の責任なのよ。だから子宮に似た器具を使ってもう1度一人に戻るための手術をするの。弟は気が変になって死ぬんじゃなくてもうそのときには彼とお兄さんは同じ人間だから、お兄さんの死体は彼の死体なの彼は自分の死に気付いて恐ろしさの余り死ぬのよ。
- 1
- それが僕たち?
- 女
- ただこの話を思いだしただけよ…
- 1
- 貴方はずっと物語をするだけだ。絶対自分のことは喋らない。貴方が兄貴をどう思っていたかも、僕をどう思っているかも話してくれない。僕はもしかしたらもうすぐパンクして引退するかもしれないけど、それでも貴方はまた新しい誰かに新しい別の物語をしてやるだけなんだろうね?
- 女
- …
- 1
- 兄貴のことを覚えている?
- 女
- ええ
- 1
- 何か話して
- 女
- よく…本を送ってくださったわ。
- 1
- 貴方のところに?どうやって?兄は貴方の住所を知っていたの?
- 女
- 回線をさかのぼったのだと言っていたわ
- 1
- 回線を?
- 女
- ええ…
- 1
- …誰かいる。
- 女
- え?
- 1
- 誰かそこにいるね?貴方のほかに。
- 女
- いいえ
- 1
- 嘘だ、もう一人いる。貴方のほかにもう一人の息遣いが聞こえる。
- 女
- 何も聞こえないわ。
- 1
- 兄貴だ。兄貴がいるんでしょう?兄貴は回線を上り切ったんだ、貴方のところまで本を届けることができたのならそんなこと簡単だ。貴方のすぐそばで貴方の話を聞いているんだ、違いますか?
- 女
- ここには本当に私一人きりよ。
- 1
- そうかもしれない。僕の留守番電話に残ってたあの声は1度電話回線を通ってきたとは思えないほど明瞭な声だった。そして今僕には確かに僕と貴方のほかにもう一人いると思えるんだ、僕は一人だし、貴方も一人だって言う、そんならもう一人のいるところはこの電話の中しかないじゃないか。何で兄貴の声はあんなにすっきりと近くに聞こえたんだ。それは兄貴がこの回線の中に住みついてしまったからじゃないのか。ねえ十二月さん、そうは思いませんか。兄貴は回線を貴方のもとまでさかのぼって貴方のすぐそばで話を聞いている。きっとこの回線の中で。十二月さん兄貴のことを話してみてよ。そうすれば兄貴はきっと返事をするに違いないんだ。ほんの一瞬のズレもなく貴方の話を聞くことができるんだからそのくらい兄貴はしたっていいはずだ。僕がこんなに兄貴のことを心配してるんだから兄貴はもう1度ぼくの前に現れたっていいはずなんだ。
- 女
- もう…月が沈むわ。
- 1
- 十二月さんは兄貴のこと心配じゃないんですか。
- 女
- 貴方のほうが心配だわ…
- (電話が切れる。ツーと呼び出し音が続く)
- 1
- 兄貴だ。今の彼女の言葉に嫉妬して兄貴が電話を切ったんだ。
女
- そして青年は女に自分は小説を書いているんだと話し始めるのよ。そういうと女も昔写真集を出したことがあると答えるの。人間の惨めさを写真に撮ってると彼女はいうの…それから彼の書いている本について教えて欲しいって。だから青年は説明するのよ。彼はインドで失踪した一人の人間でもうひとりの人間が彼を捜している。でも決して彼はその人に見つかりたくない。だから彼は逆に自分を追っている人間を追跡し始めるの。追っ手は1通の手紙とはっきりしたことを教えられない証人たちしか手がかりを得ていないけど彼は追っ手のことを全て知っているの。だってむかし親友だったんだから。親友はまずボンベイの宿を尋ねる。それから病院に。親友は彼を追っているはずなのだけれど、何故追っているのかも分からないの。それから彼は本の終盤頃になって彼が偽名を使っているんだと友人に気付かせてやるのよ。そして彼はある女性とレストランに入り席に着く、そして女性の肩越しに彼の追っ手を認めるの。追っ手も彼を認めるわ。追っ手の向かいにも女性がいて彼等は目を合わせ、お互いに満足する。追っ手は彼を見つけたけれど見つけてしまったらもう追う気にはならない彼も見つか
りたくはない。だから二人とも何もしないでただ見詰めあっている。本の終わりはこんなふうだって女性に説明してやると女性は少しラストシーンが弱過ぎるわという。でも彼女は振り向きはしないから本当に彼女の背後に彼を追ってきた友人がいるのか、それとも彼自身がおってきた男がいるのか、それとも誰もいなくて老夫婦かなんかがいるだけなのかが分からないの。だから読んでいる私達も結局誰が誰を追って旅をしていたのか分からないの。ただはっきりしているのはこの二人の食事代を誰かが支払ってくれたってことだけ。いいえ、少なくとも彼が女性にそう言ったことだけは確か。本当は彼が支払ったのにそれを隠しているのかもしれないし、追っ手だか彼の追っていた男だかとにかく彼の向かいに座っていたもう一人の人物が払ったのかもしれない。一緒にいた女性に一目惚れしたどこかの財産家が支払ってくれたのかもしれない。結局誰かがインドを旅して誰かが本を書いたってことしか私達には分からないの。もしかしたらこの二人は実は一人の人で追っていたのも追われていたのも同じ人なのかもしれないわ…。
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- 犬川は只今留守にしております。発信音の後に伝言をお願いします。
- (発信音)
- 3
- 城戸です。ついにパンクしたのか冬休みで帰省しているのかは知らないが十二月さんがえらく心配してる。一度掛けてこい。それから…気が進まないがこの前の件、特別に教えてやろう。用意するのは市外電話専用のクレジットカードと公衆電話だ。カードは例の「お得な市外電話」って奴に加入すればすぐ手に入る。こいつを公衆電話にいれて暗唱番号を押せばクレジット通話が可能だが、カードを入れるとカードが勝手に市外電話につないでID番号を回してしまうから、IDを回される前に掛けたい電話番号の音を聞かせるんだ。ほんの3秒ほどの間隙を縫わなくちゃならんがオートダイヤラーかなにかを使えば簡単だ。但し一般の公衆電話はQ2を受け付けないから電話を吟味すること。…十二月さんじゃないが俺も段々心配になってきたから1度声を聞かせてくれ。幸いまだ電話は通じるようだし。では
- 声
- 午後四時二十二分です。
- 母親
- 英次、今日お兄ちゃんの学校から何か言ってきたんだけど、お父さんもお母さんも暮れで忙しいから代わりに行って聞いといてくれないかしら。お兄ちゃんのところは今電話が通じないみたいだし、1度下宿のほうに様子見にいってやって。
- 声
- 午後十時三十八分です。
- 母親
- 英次、お兄ちゃんが大変なの。電話じゃ詳しく説明できないから帰ってきたらすぐにこちらに電話を頂戴。その上で帰ってきてもらわなくちゃいけないことになるかも知れないけどとにかくこれを聞いたらすぐ家に電話してね。声
- 午前十一時五十二分です
- (ツーと呼び出し音)
- 声
- おかけになった電話番号は只今お客様のご都合により通話できない状態になっております。おかけになった電話番号は只今お客様のご都合により通話できない状態になっております…
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