(1981.7「ドラマ」(映人社) 鳥山拡「ベネチアよ……」より引用)
『川……』は、生まれて、歴史の渦の中にのみこまれ、死んでいく人びとの暮らしが、実は、静かさの一点で、流れるままの現代をすり抜ける技のあることを描いている。愛と断念という、きわめて自己中心的な人生もあるだろう。しかし、愛は、生きる喜びは、何気ない日常生活のことばの中に在るものだ。何気ない音の流れにきこえてくるものだ。これを確信して、人生を切り取る時、『川……』のようなドラマが生まれる。